山田詠美 賢者の愛
以下敬称略。そしてネタバレ。
山田詠美の作品が好き。
多分、出版されているすべての小説(エッセイ以外)を一読している。
同様に出るたびチェックしているのは、
つまみ食い程度だけど結構読んでるのは
村上春樹、小川糸、瀬尾まいこ、伊坂幸太郎、嶽本野ばら、らへんかなあ。
皆さんデビュー当時の作風が好きなのですが、
山田詠美は唯一、新刊が出るたびに違った表情が見える気がして、
最近の作風の方が私は好みです。
デビュー初期の、山田詠美のアイデンティティといってもいいと思う、
ブラックアメリカンの男性と日本人女性の恋愛はあまりはまらなかった。
さわやか路線な青春小説も、好きだけど。(僕は勉強が~とか、ペイデイ、放課後の音符あたり)
私は山田詠美の描く女同士の粘りっこい友情がとても好き。
初期の「蝶々の纏足・風葬の教室」がいちばん好きだったんですよね。
あれは幼少期~高校時代を切り取ったものでしたが、
今回の賢者の愛も、こちらを彷彿とさせる。
えり子が自身の唾と混ぜ込んだバニラアイスを食べさせるシーン、
今回も同様の歪んだ愛情を感じました。
主人公マユの初恋の男性を奪った親友ユリ。
ユリはマユに焦がれ、マユの所有物はすべて欲しがり、自分のものにしていく。
ユリに子供が生まれ、マユは「痴人の愛」にちなんでナオミと名付ける。
マユはユリの息子を調教することで、復讐をしていく物語。
苦しいのは、ナオミとマユが本当に愛し合ってしまうこと。
マユは△かな。ナオミの向こうに、りょう兄さま(初恋のひと)の影を見ているような気もする。
ナオミは心底マユを愛している。
ドラマも見ちゃった。
細かいけどユリのことはユリ!って呼び捨てにしてほしかった。
圧巻は、ユリが処女をもらってくださいと、りょう兄さまを誘惑するシーン。
しっとりした浴衣姿で、あんな美女に拝み倒されて、押し倒さない男性はいないだろう。
ドラマ版では、ユリが強引に正吾(マユの父親)に迫り、
正吾は拒否したけどユリが無理やり、というような雰囲気だった。
(正吾の本心はともかく、一応は拒否していた)
たまたま、あるいはユリの計算上、ユリが強引に迫ったところをマユが見てしまった、という感じ。
小説版ではもっと、相思相愛じゃないけど、もっと正吾がユリ側にいる感じ。
正吾が椅子に座り膝にユリを乗せていた、というような描写が原作にはあるので、
正吾も憎からず思いそして…というマユにとってはより絶望的な形です。
ドラマ上は小児性愛の問題でああいった演出になったのかな。
いやどのみちアウトか。
それとも私の解釈違いかな。
ユリのちょうだい、ちょうだい、まゆちゃんちょうだい…という声が耳に残る。
ねめつけるような視線。ともすれば同性愛のような二人の友情。
マユも根底ではユリのことを思っているから別れられない。
好き、というよりも、親友、というよりも、もっと深い繋がり。
マユはユリ以上に恐ろしい女です。
あ、僕は勉強ができないの主人公が大人になった姿も出てくる。
ファンサービスありがたい。笑
オマージュ作品となった、痴人の愛も読む予定です。
山田詠美、以前の短編集で、村上龍へのオマージュ作品も出してるんですよね。
きちんと原作を踏襲していて、おもしろかった。
痴人の愛は未読なので何ともいえませんが、いっぱしの本の虫としては、
こういう取り組み大歓迎です。