どんぐり備忘録

アラサーOLのブログ 映画、暮らし、日々の記録

コロナ禍で過ごした夏

2020年の夏は狂ったように本ばかり読んでいた、読みたい蔵書が無い時は図書館をいくつかはしごした。kindleでもたくさん購入した。

例えば音楽みたいに、車内でつけたラジオで、とか、アプリのサジェスト機能をBGMにしていて、という気軽で新鮮な発見は、本探しには少しハードルが高い気がする。アンテナを張って探して失敗するケースを想像すると、ずぼらなわたしには、新規開拓が億劫なのです。読みはじめは退屈でも読了すると素晴らしい小説だった。という経験が往々にしてあるけど、そこに辿り着くまで、当たり外れがわからないことも、結構あるから。YAと呼ばれるジャンルを卒業し純文に手を伸ばした、小学校高学年のころから、わたしは愛読書がこの20年弱ほぼ全く変わってない。毎回毎回ばかのひとつ覚えみたいに同じ作家の上梓したものばかり読んで、新しい作家やジャンルにはなかなか食指が伸びなかった。真の読書家はその失敗(と表現していいのかは置いといて)も楽しめるのかもしれないね。

今年は行きたい場所も行けないし会いたい人にも殆ど会えない。独身かつリモートワークで余裕ができた私には時間だけがたっぷりあった。

高校時代の恩師が、新書を読みなさいと口を酸っぱくして言っていたことをふと思い出した。とっつきにくい分野でも、新書サイズだと初心者にもわかりやすく簡潔に要約されているから知見を広げなさいと。政治や金融、心理やエンタメなどの各分野から1冊ずつ手に取ってみた。そこから派生して数年前に流行った倫理学の専門書を読んだ。ビジネス書も自己啓発本も読んだ。医学書精神科医の手記を読んだ。芸能人の旅行記エッセイを読んだ。文芸誌を読みあさって、好みの文章を新たに見つけて、その作家のハードカバーを読んだ。賞をとった流行りのエンタメ小説を読んだ。絶版となった作家の全集を閉架からひっぱってもらって読んだ。

そうすると新たに自分の好きな方向が見えて来た。頭を鍛えられてアウトプットが必要な専門書や自己啓発系は、怠惰な私は継続しては読まないと思うけど、少しの知識が身についた。新書を読むことは仮習慣化してみようと思った(自分のためになのか、大好きだった先生との思い出のためになのか、びみょう。)15年ほど更新されてないなかった、好きな小説家一覧に、このひと夏で何人も加わった。自分の中で閉じた趣味の枠組みにいた読書が花開いた感じ。まだこんなに扉があったんだ。開けてなかっただけだったんだ。みたいな。

大変な状況下だけど、私が無知だっただけで、少しの面倒を面倒と切り捨てないだけで、世界にはこんな面白いことが広がってたんだ。ということに静かに気づいた。言葉にすると大仰に響いてしまうね。亡くなった祖母も、尊敬していた前職の上司も、困ったら本が助けてくれるからと言っていた意味がわかった気がした。